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歌舞伎は江戸時代のテレビだった



歌舞伎 語源は、傾く(かぶく)から来ていると言われる。

傾く、斜に構える、かっこつける、グレる、みたいな感じ。

始まりは、415年位前、お国さんという綺麗なおねいさんが、

仲間と一緒に京都の四条河原で踊りのショウをやったのが始まり

斬新な衣装(男性の恰好をしたり)で、斬新な踊りをやったのだそう。かぶいていたんですね。

このショウは大人気になり、江戸にも招かれて興行したそうです。



ところが、しかし、ご公儀(幕府)から、「風紀が乱れる」と、禁止されてしまいます。

興行主たちは、じゃあ今度はと、イケメンボーイズを揃えてショウをやりましたが、

これも禁止に、、、、。

そこで仕方なく、おじさんがやることになったのでした。

女役もおじさんがやるしかありませんでした。

しかし、それが、長い年月をかけて芸術になりました。



しかし今はもう、幕府も無いので女性が舞台に上がっても全然問題ないと思います。

思いますが、しかし、女性が女性役をやってもなんだか歌舞伎っぽくない。かぶいてない。

だから女性がやるなら男性役をやるとか、なんかそういうほうが歌舞伎っぽい様な気はします。



歌舞伎は江戸時代の民放テレビ


能はNHK、歌舞伎は民放みたいなものでした。

能は偉い人しか見る事が出来ませんでした。

そこで、庶民向けに行われた商業演劇が歌舞伎です。

今のテレビ局の様に、いくつかの芝居小屋が集客を競い合っていました。

なので、集客の為にいろんな事をしました。

人気の有るスターと契約したり、流行作家に書いて貰ったり、企業とタイアップしたり、、、。

派手な演出をしたり、人形浄瑠璃で人気になったものを移植したり、流行を取り入れたり、、、。

集客の為に、派手な事をやったり庶民向けだったりしたので、

歌舞伎は実は、時代考証がめちゃくちゃです。



歌舞伎には、おおまかに言って、時代劇、現代劇、踊り、能を移植したもの、などの種類が有ります。

時代劇は江戸時代からみての時代劇、鎌倉時代など、源氏や平家のお侍さんなどが主人公です。

現代劇は江戸時代の現代劇、左官屋さんだの魚屋さんだの、相撲取りだの花魁だの、

そういう人たちが主人公です。

踊りは、普通の踊りよりもずっとショウアップされています。

能を移植した「松羽目もの」も、能よりもわかりやすくショウアップして演出されました。



江戸の歌舞伎と、上方の歌舞伎ではちょっとテイストが違います。

江戸歌舞伎と言えば、市川團十郎。スーパースターでした。



江戸時代の芝居小屋、当時は勿論電気が無かったので、芝居は日中行われました。

天井から太陽光を取り入れて舞台に当てたりしていたので。

現代の様にスポットライトなどが無かった

(ろうそくのスポットライトみたいなものは有りました)ので、

主人公の顔を良く見せる為に白塗りのメイクになったと言われています。


現代の映画で多用されるテクニックの多くは、とっくの昔に歌舞伎で行われていた、

と言われたりします。


例えばズームアップ、これは動きを止めて見得を切るなどで、ズームアップの効果が有ります。

暗闇の場面では、動きをスローモーションにする事で暗さを表現したり、

縄で吊って空を飛ぶシーンを作ったり、回り舞台で素早く場面転換をしたり、

それはそれは多様な演出が有りました、というか、今でも有ります。



朝早く、芝居小屋に行って芝居を見て、途中で茶屋でお昼ごはんを食べたり、

客席で弁当を食べたり酒を飲んだりお菓子を食べたりしながら観劇しました。


日没までの間、ずっと芝居が行われていたのでした。

その伝統は今でも生きていて、昼の部、夜の部の2部制になっていますが、

それぞれ
4時間以上は劇場の中に居る事になります。

お弁当の時間も設けられていて、劇場内でお弁当を食べたりします。

また、お茶やお菓子を食べながら観劇できるのも昔の名残でしょう。
(音が出る食べ物、匂いが出る食べ物は迷惑になるのでマナー違反です)



相撲で、横綱が負けると座布団が飛び交いますが、あれは江戸時代の芝居が起源かもしれません。

芝居小屋の一階桟敷席は、枡形に区切られている土間で、紙を敷いて座りました。

役者がヘタな芝居をすると、ブーイングの代わりに敷いていた紙が飛んできたと言われています。



歌舞伎には花道が有ります。

これは偉大な発明なんじゃないでしょうか。

花道が無い歌舞伎なんて、あまり考えられないかもです。

しかし、最近では、歌舞伎専用ではない劇場で上演される事も有り、

花道無しでやることも増えてきました。


市川團十郎がパリのオペラ座でやった時、客席の通路を花道の様に使っていましたね。



江戸時代に幕府に禁止されて今の形になった歌舞伎ですが、

実は昭和にも上演禁止になった事が有ります。


それはアメリカの占領軍GHQによる検閲の為でした。

しかし、その危機を救ったのもアメリカ人でした。

戦前、日本に来て歌舞伎が大好きになったバワーズさんというアメリカ人が、GHQの中に居て、

自ら検閲係になり、上演禁止を解禁していったのでした。



歌舞伎の値段ですが、ピンからキリまであります。

一階の一等席はだいたい2万円くらい。

劇場の両側にある、小さな個室の様な桟敷席はそれよりもうちょっと高いです。

逆に、学生でも見られる様に、という事で、安い席も有ります。

4階にある、一幕見席、1000円くらいからです。

んでもねぇ、せっかく歌舞伎座に行ったのに4階から見るんじゃあちょっと悲しい。

奮発して一等席に座るのがおすすめです。

一等席も色々で、端っこのほうだとちょっと辛いです。

昔は「とちり」と言いました。

以前の歌舞伎座の席順は、いろは順になっていたので、

前から7番目、8番目、9番目(と、ち、り)がベストだと言われます。


でも、一番前の席とか、花道のすぐ近くの席とか、それぞれ良さは有ると思います。



お弁当もピンからキリまで有ります。

1000円台のものから10000円のものまで、実に色々。

せっかく歌舞伎座に来たのだから、という事で、自分はだいたい3500円のお弁当にしていました。

1万円のお弁当というのは歌舞伎座内に有る「吉兆」のお弁当なので特別な人しか利用しない感じ)

その他、筋書(プログラムのこと)を買ったり、初心者ならイヤホンガイドを借りたり、

お菓子やおみやげを買ったりで、一等席にすれば一人2.5~3万円くらいかかってしまいますね。


逆に、一幕見席だとチケット1000円に、自動販売機の飲み物程度で

1200円くらいで済んでしまいます(んでも、遠くて見にくいです)





歌舞伎ってどんなの?と言われても、実に幅が広く、

映画ってどんな内容?と聞いているのと同じで、

そんなもん、アクションからラブストーリーからミュージカルから何から色々有るがな、

という事になります。


なので、演目を選んで見に行ったほうがいいですよ。

自分の好きそうなものを選びましょう。

演目は月ごとに変わります(1か月間ずっと同じ芝居をします)

例えばこれは過去のものですが、こんな感じにプログラムが組まれています。

右側が昼の部、左側が夜の部です。




昼の部を見ると、3本立てになっています。

矢ノ根を見たらお弁当の時間になり、
そのあと、加賀鳶を見て、ちょっと休憩でお茶を飲んで、
そのあと連獅子を見る、という感じです。

左側の夜の部は、「通し」と言って、長いお芝居を1本上演します。

第1幕、第2幕を見てからお弁当を食べ、そのあと第3幕、4幕と見ていきます。



歌舞伎の演出法はとても特殊です。

型と呼ばれるものが有り、先祖代々受け継がれた演技法が継承されていたりします。

しかし、歌舞伎は元々庶民向けの商業演劇ですから、古典を大事に守り続ける一方で、

新しい試みにもどんどん挑戦します。

昭和になってから、「スーパー歌舞伎」というものが作られて人気になった事も有りました。

「平成中村座」や「コクーン歌舞伎」など、歌舞伎座以外の劇場で、新しい演出で上演されています。

 

それから、歌舞伎は、ストーリーを追って見るものではないと思います。

映画の様に、それから?それで?それからどうしたの?と、ストーリーを追うのではなく、

場面場面の美しい演技を鑑賞するもの、と言えると思います。

映画などでも、好きな俳優の名演技にトリハダが立ったりする事が有りますよね、

それを見るのが歌舞伎だと思います。

なので、ストーリーなんてどうでもいいような所が有ります。

ハチャメチャなストーリーのものもたくさん有ります。

また、長いお芝居の中の1幕だけを上演する事も良く有ります。

前後の話はぶった切って、その一幕だけを見せるというのは、

やはり演技を見るもの、だからではないでしょうか。




歌舞伎は、実はマイクを使いません。

江戸時代の時と同じ、地声でやっています。

マイク無しで、4階席までセリフが聞こえるのです。

というか、聞こえる様なセリフの言い方をしているわけです。



また、歌舞伎の演出の最大の特徴は、様式化されていること。様式美、と言われます。

リアルな芝居ではなく、様式化した芝居をする事でどうなるか、

それは実は見る者の頭の中にその光景が広がるのではないでしょうか。


舞台上で全部リアルにやるよりもずっと多く感動を得る事が出来ると思います。

主人公が悲しくて泣いている、その気持ちを自分の頭の中で想像しながら見ると、

リアルな演技を見るよりずっと多く泣けるのではないかと思います。


登場人物が空を飛ぶ場面、勿論ワイヤーで吊りますが、江戸時代は荒縄で吊りました。

現代の演劇ではワイヤーにライトを当てない様にして、

本当に空を飛んでいる様に見せる工夫をしたりしますが、

歌舞伎ではそこもリアルにはこだわりません。


本当に空を飛ぶわけはないわけで、吊っているのは大人ならすぐ解る事。

そこをリアルにやるよりも、見る人の頭の中で美しい光景が広がる事を大事にしている様に思います。

歌舞伎を見るとき大事なのは想像力かもしれません。

舞台上ですべてリアルにやって完結するのではなく、

見る人の頭の中の想像力も巻き込んで完結する、とても高級なお芝居だと思います。

抽象というものを理解できる優れた頭脳を持った人の演劇だと言えるのではないでしょうか。

全部具体的に説明しないとならないのとは随分レベルが違うと思います。

なので、全部リアルにしないと気が済まない様なハリウッド映画が

ちょっとバカっぽく感じられてしまいます。

 

歌舞伎座に行く時はぜひ、おしゃれして行ってください。

和服が有れば是非着て行きましょう。館内の贅沢な雰囲気を楽しんでください。

もちろん、Tシャツに短パンでもいいんですけどね。


初めての時は是非、イヤホンガイドを聞きながら観劇してみてください。

とても良く解りますし、名調子、名解説な解説者もいますよ。

慣れてきたら、昔の言葉も難しい言葉も、義太夫の語りも全部聞き取れる様になって、

イヤホンガイドはいらなくなるでしょう。

 

そんな感じで、歌舞伎は堅苦しいものではなく(堅苦しい芝居も有ります、絶対寝ちゃうやつ有ります)

エンターテインメント、江戸時代の民放、楽に楽しむもの、です。

半日がかりの楽しい娯楽、食事、鑑賞の空間です。

 

 

歌舞伎を見に行くとして、どんな演目を見たらいいでしょうか。

それは個人のシュミによって随分違って来るので一概には言えません。

歌舞伎に詳しい人に教えて貰うのが良いと思うのですが、

ただ、詳しい人は「高級な内容のもの」が良いと思っている事が多い為、

勧められた演目を見ても難しくて分からなかった、という事が起こる可能性も有りますね。

かといって、「初心者向けの分かりやすいもの」がいいとも言えないと思います。

あまり深く知っている人に聞くより、

なんとなく知ってる位の人に聞いたほうがいいかもしれませんよね。

この辺は難しい所です。



ただ、難しく考えずに、役者がイケメンだからとか、

そんな理由で選ぶのも大いにアリだと思いますよ。

ネットで調べても、ストーリーが書いてあるだけだったりすると、上にも書いた様に、

ストーリーなんて問題ではないようなところが有りますから、

あまり参考にはならないかもしれません。


見た目が綺麗なやつ、とか、派手なやつ、とか、泣けるやつ、とか、

そんな言い方で何がいいか聞いてみるのもいいかもしれませんね。

自分が生まれて初めて歌舞伎を見たのは、19歳くらいの時で、

80代のおじいちゃんから勧められたのがきっかけでした。

今「義経千本桜」をやっているから行ってみたら?と言われたのでした。

このお芝居なら、初めてでも、色々仕掛けが有って見た目にも面白いからいいと思うよ、


と言われて見に行ったのでしたっけ。

初めて見る自分には大当たりでしたね、、、。

良さそうな演目をやっている時に狙いを定めて是非見に行ってみてください。



外国人から大絶賛される歌舞伎です、

日本人なら一度くらいは見ておいたほうが良いと思いますよ。

歌舞伎座、お弁当はこちら

 

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